こんにちは、aomiです。「ボーイズラブ名作選 ~BLの歴史、予備知識編~」の時系列を踏まえて、今回はいよいよBL史に残る名作の数々をご紹介していきたいと思います。腕が鳴ります。
前回もお話ししましたが、SNSの普及もまだの時代、同人イベントにも行けない(むしろ存在を知らなかった)ような田舎の隠れ腐で読むとしたら商業しかなかったんですよね。
中学生の頃はお金もなかったので週5くらいブック〇フに通ってたのもいい思い出です。
休みの日には遠出して都心の大きなブック〇フに行き、テンションが上がりました。笑
ご紹介したい作品がたくさんあるので、お暇な時にでも「ほうほう昔にはこんな作品が」という風に興味を持って頂ければ幸い!
『間の楔』/吉原理恵子
脳以外は完全なる人工体であるイアソンが、気まぐれで拾ったスラムのリキを自分のペットとして手元に置くことで、本来あるはずのない感情がイアソンの中に芽生えていくお話。
JUNE作品を語るうえで絶対に外してはいけない、言わずと知れたJUNEの代表作でもある「間の楔(あいのくさび)」です。多くの腐女子のバイブル的存在! 私もその一人。
さらには美形鬼畜攻めと男前受けの元祖だと思います。
作家 | 吉原理恵子 |
発行 | 1990年 |
ジャンル | SFファンタジー |
作品傾向 | 純愛・ハード |
カップリング | 長髪美形エリート×スラムの頭 |
関係性 | 飼い主とペット |
あらすじ
「私がリキを愛してる…と言ったらお前は笑うか?」
何もかもが管理された未来都市・タナグラ。
その片隅の、歓楽都市・ミダス郊外、特別自治区ケレス―通称スラムで不良グループを仕切るリキは、夜の街でカモを物色中、手痛いミスで捕まってしまう。
捕らえたのは、中央都市タナグラを統べる究極のエリート人工体・金髪のイアソンだった。
特権階級の頂点に立つブロンディーと、スラムの雑種―本来決して交わらないはずの二人の邂逅が、執着に歪んだ愛と宿業の輪廻を紡ぎはじめる…。
耽美SF大河ロマン。
レビュー
BLでも珍しいSF作品です。
どちらかと言えばニトロ〇ラスキラル系の、現代要素を兼ね備えたオリジナル近未来SF。
架空都市や専門用語もたくさん出てきますが、すんなりと受け入れられると思います。
貧困格差が激しい時代、知能を持った不老不死の人工体(脳のみ生身)によって都市は管理されています。
減少傾向にある女性は隔離されており、男同士でパートナーの存在(ペアリング)になることも珍しくありません。
貧困層が暮らすスラムでの不良グループの頭である主人公・リキも、ガイという親友とペアリングをしていました。
好きだ愛してるだそういった恋人関係ではなく友情の延長線であり家族のような存在。性欲処理もその中に含まれます。
カリスマ性溢れ、自然と人を惹きつけるリキはあまり人に対して心を許さない一匹狼タイプでしたが、唯一心を許せる相手がガイでした。
そんな生活の中で、いつものように歓楽街でカモにスリを仕掛けたところでブラックマーケットを統括しているスーパーエリートのイアソンによって捕らえられてしまう。
「ゾッとするほど怜悧な美貌であった。近寄りがたく、かつ、犯しがたい品位すら感じさせる男――それが、イアソン・ミンクだった」
たかがスラムの雑種一匹、取るに足らないと見逃そうとするイアソンだったが、いけすかないエリートに借りを作りたくないリキは身体の取り引きを(あくまでも対等に)持ち掛ける。スラムの雑種風情に手を出すほど、苦労していないと相手にしないイアソンだったが、何が何でも借りを返そうと挑発してくるリキの意志の強い瞳にただ物珍しさだけで応じ、結果リキはイアソンによっておもちゃにされてしまう。こんなつもりじゃなかったと、されるがまま扱われたことに屈辱を覚えるリキ。
リキは若さゆえに怖いもの知らずで「売られた喧嘩は倍返し」という気性が荒く負けず嫌いの性格で、イアソンによって自分が粋がってるだけのただのガキだと格の違いを思い知らされたような感じもします。
その後、リキはイアソンとのことは考えないようにと生活していましたが、とある依頼の仕事をこなしている時にイアソンと再会します。実は意図的にイアソンが仕向けた罠だったんですけどね。
そうしてイアソンによって捕らえられたリキのペット生活が始まります。
悶えポイント
・気位が高く、意志の強い瞳をしたリキを自分の従順なペットにするためにありとあらゆる調教をする。
ペットリング(貞操帯)装着により射精管理、衆人環視、強制自慰、世話係(虚勢済み無気力系「ファニチャー(家具)」として扱われている)にフェラさせる、など。痛みより快感による屈辱によって支配する。
・調教をしている時は衣服も乱さず手袋もしたままだったのに、初めて裸になって手袋も外してリキ自身と触れ合う時の二人の心境の変化。
リキもそのことに戸惑ってるのが萌え…!
・ペットは飼い主に直接抱かれることが少なく、大抵はペット同志でセックスさせてそれを見て楽しんでいるが、イアソンは自らの手で調教し、リキに一度も他のペットとセックスさせないのが萌え!!
一度女の子のペットとリキがイイ感じになっちゃったことがあってその時のイアソンの怒りっぷりったら…!悶
・エリートであるイアソンが同じくエリートであるラウールに、スラムの雑種であるリキを手元に置くことをやめるように言われるが、エリートとしての体裁よりもリキを側に置くことを選び、ラウールの忠告を拒否するイアソン。
そこで
・誰かを好きになるという感情がない人工体であるはずのイアソンがリキに対して抱くものとは執着か、それとも……。
あらゆる調教をされた3年間を終え、とある事件により理由もなしにリキはスラムに返されます。
ペット生活から介抱されたことに安堵し自由を謳歌するリキでしたが、その間誰とも関係を持たず、自慰もおざなりに。
イアソンでないと満足できない身体になってしまっていることを自覚したくなかったんですね。
そして一年後。
いよいよイアソンが様々な手段を使ってリキを迎えに来ます。
イアソン自身リキを手放す気などみじんもなく、ただペットリングを外し1年間くらい羽を伸ばさせてやろうとしただけでした。
イアソンに触られると反発したい気持ちに反して3年間じっくりと教え込まれた身体が疼きます。
身体がイアソンを欲していると嫌でも自覚させられたリキはとうとう…
「――して…くれ、よ…」
初めて自分でイアソンを求めるリキ…!
そうして再びリキにペットリングがはめられ、再度イアソンと共に生活を送るようになります。
ペットは割と若い子が多いんですが、大人になってまでエリート中のエリートであるイアソンのペット、しかもキスマークが絶える日がないほど抱かれているリキに他のペットは嫉妬です。
リキを手元に置くことでイアソンも外野からギャーギャー言われますが、聞く耳持たずリキと穏やかな日々を送っていたと思うんですよ。
リキを愛してからの、イアソンの深く執拗な愛情が言葉はなくともひしひしと感じてきて、胸が締め付けられます。
そんなある日、ガイにリキがイアソンのペットであることを知られてしまう……。
イアソンとガイに対するそれぞれのリキの想いと選択を見届けて欲しいと思います。。
まずはハードカバー版をおすすめします
加筆修正された文庫版(クリスタル文庫は途中打ち切り、その後キャラ文庫で完結)も発売されていますが、吉原先生の文章の書き方が変わってクセが強くなりすぎているので、
是非ともはじめはハードカバー版を読んで頂きたい…!
OVAもリメイク版が発売されていますが、そちらも過去のものを…!
初代は、絶対的スーパーエリート長髪美形のイアソンは今は亡き塩沢兼人さん、一匹狼でクールだが破天荒でカリスマ性溢れるリキは関俊彦さんです。
二代目はイアソンが大川透さん、リキが伊藤健太郎さんです。
好みもあると思いますが、過去の作品ってセル画ならではの重みがあるんですよね。
正直、小説もOVAもリメイク版もファンへの蛇足に感じるので初めてお手に取られる方には過去のものからお手を出していただきたいです。
ハードカバー版も初代OVAも無駄なところが一切なく、ひとつの作品としてきれいにまとまっていて、まるで映画を見ている様。一生に一度読んで損はない作品です。
文庫版にはイアソンがリキをペットにしていた3年間が濃密に描かれているので、ハードカバー版を読んだ後に文庫版を読めば一層楽しめると思います。
ちなみにこのレビュー、本を見ずに書いていますが我ながら植え付けられた記憶すげぇとなっています。記憶違いがあったらごめんなさい。m(__)m
吉原先生の作品は他にもご紹介したい作品があるので、まだまだ続きます!