こんにちは、aomiです。 儚げな受けが桜によって攫われてしまいそうな不安に駆られ、 攻めが思わずその手を取る季節がやってまいりました。 しかし日差しは暖かいですが風はまだ冷たいですね。 寒暖差にはくれぐれもお気を付けください。
今回は少し趣向を変えて、男同士を取り扱った名作の数々をご紹介してみようと思います。 今でこそSNSが普及したり、同人やBLがオープンマインドに捉えられている時代ですが、 田舎でひっそりと腐女子になった思春期の私は隠れてひたすらBLを読み耽ることが楽しみでした。
ゆりかごから墓場までならぬ、JUNEからボーイズラブまで。
BLの歴史
男同士を取り扱った作品には「耽美」「JUNE」「ボーイズラブ(BL)」「やおい」等 さまざまな名称があるのをご存知でしょうか。 私もリアルタイムにその時代を生きたわけはないので、 独断と偏見による解釈になってしまうかもしれませんが少しだけ解説したいと思います。
「ボーイズラブ(BL)」という呼び方は比較的新しい呼び名で、 元々は「耽美」や「JUNE」と呼ばれていました。
耽美
「ボーイズラブ(BL)」の元祖でもある「耽美」は1960年末に萌芽が見られ、 70年代には「24年組」と呼ばれる女性漫画家たちが少年同士の愛を描いた 「風と木の詩」(竹宮惠子)、「ポーの一族」(萩尾望都)、「摩利と新吾」(木原敏江) などを少女漫画雑誌で発表しブームとなりました。
現在の「ボーイズラブ(BL)」のように「JUNE」(後述)が浸透し、 腐女子の間では「耽美」も「JUNE」の一部(もしくは同義)になりましたが、 「耽美」と呼ばれなくなった理由として谷崎潤一郎や永井荷風などの耽美派と ごっちゃにならないように、との説もありますね。
美しさにはそれゆえの「儚さ」があります。 そして、怖くても、惨くても、ただひたすらに美しい……それが「耽美」。 思春期の多感な時期、一過性の少年愛もこれに含まれます。 (「車輪の下」(ヘルマン・ヘッセ)は耽美的少年愛の元祖だと思う) 中村明日美子さんや笠井あゆみさんのように、ビジュアルでわかりやすいものもあれば、 小説に関しては「JUNE」との分類が難しく、曖昧です。 (ちなみに昔の本屋でBL小説コーナーは「耽美」と書かれていました) 雰囲気はかなり退廃的で、舞台が外国だったり、ギムナジウムだったり、時代劇だったり、 どこか情緒があったり、ファンタジー的なのが特徴かもしれない。 そして愛憎劇が多い気がする。
耽美作品に対しての印象は「何よりも際立つ美」、 しかし、美が際立ってるからといってエロくないと思ったらびっくりです。 耽美小説界の巨匠・山藍紫姫子さんは、
すべてが濃い中で美しさが秀でてフリーザ様レベルなんです。 耽美作品はエロティシズム(官能)も美としてとらえている傾向にはあるかな。 少なくとも「○○たそ萌える~~!(*´Д`)ハァハァ」とはならない。笑
現在の「耽美」の扱い
元祖が少女漫画だったからか、一般向けに近い気がする。 必ずしも男同士に限らず、現在ではその生半可ではない突き抜けた世界観から サブカル系に分類されることもありますが、 一般向けだからと言って一般人の方が迂闊に手を出したら大やけどします。 かなり括りが大きく、サブカル色の強い「ライチ光クラブ」(古屋兎丸)はグロだし、 先ほどにも挙げました山藍紫姫子さんの「アレキサンドライト」はファンタジーSMです。 ちなみに「アレキサンドライト」は角川文庫で一般書扱いで発行されましたし、 「ライチ光クラブ」は舞台化もされましたね。
JUNE
「耽美」の次に生まれたのが「JUNE」と言う言葉。 言葉自体が発生したのは1979年2月になります。 現在のジュネットの親会社・サン出版から刊行されていた雑誌 「JUNE」(創刊当時は「comicJUN」)が由来です。
「禁忌」「禁断」「背徳」ゆえの「苦悩」や「葛藤」があり、 「耽美」同様ヘビーな内容も多く、必ずしもハッピーエンドではありませんが、 「耽美」よりも、より「男」や「同性同士」が強調されたイメージ。 主人公たちの「恋愛」を中心に進む作品は少なく(例えば事件だったり)、 更に男同士の関係が「恋愛」という枠に収まらないところが特徴です。 それは執着だったり、興味本位だったり、憎悪だったり、因縁だったり……。 さらに男同士という「禁忌」「禁断」「背徳」が強調されているので、 「苦悩」や「葛藤」も多く、軽々しく「好き」や「愛してる」と言えない風潮だった気がします。
二人の間に何かが生まれたのは確かだけれど、 はたしてそれは愛と呼べるものだったのだろうか……。みたいな!
かなりドラマチックな作品が多く、物語性が高いと思います。 ちなみに私は「間の楔」(吉原理恵子)で育ちました。
雑誌から生まれた「JUNE」という言葉ですが、徐々にそれが現在の「ボーイズラブ(BL)」同様、 男同士の関係性(複雑すぎて「恋愛」という言葉が使えない)を示す代名詞になります。
当時「JUNE」で連載していた「小説道場」(中島梓)や、 「ケーコたんのお絵かき教室」(竹宮恵子)で、多数の作家が輩出されました。 このあたりは本当に名作が多いんですけど、浮かぶ作品が小説ばかりなので やはり「小説道場」の影響か、小説がブームだったのかもしれない。 気になったので調べたところによると、 当時は小説がメインだった雑誌が多く発行されていましたが、 時代の流れと共に漫画など絵の方が求められていくようになったため、 小説雑誌で発売していたものは次々と休刊・廃刊に追い込まれていくことになったのだと。 漫画がメインになるにつれ、ライトな作品が徐々に増えていき、 「JUNE」から「ボーイズラブ(BL)」に移り変わっていったのかもしれないですね。 そう考えると、吉原理恵子さんの「幼馴染」とかはライトBLの先駆けだったのかなぁ。
当時は男同士の性別を越えた「関係性」に対する萌えと、 その上で成り立つ「物語性」が大きいものだったのかも。 「耽美」や「JUNE」を愛している者からすれば、 ライトな印象の「ボーイズラブ(BL)」との使い分けはかなり重要になってくると思います。 (一概にすべての「ボーイズラブ(BL)」がライトだとは言えませんが、「当時」のイメージで)
やおい
少年漫画の男キャラクター同士をこっそり×××させる パロディ同人誌ブームが80年代から盛んになり、 基本的にノーマルである男キャラクターを邪な目で見た腐女子たちが 自分たちの作品や妄想を自虐的に「山なし、オチなし、意味なし」と捉え、 その頭文字を取って「やおい」と呼ぶようになりました。 パロディということに対する自らの戒めもあったのかもしれない。 なんとなく、腐女子たちの「いいから勝手に萌えさせろ!」って感じが伝わってくるような。笑 その「やおい」が徐々に同人とは関係なく「男同士の恋愛」自体を示すものとなり、 腐女子に使われるようになったんじゃないかと。 「JUNE」よりライトな印象なので、こっちの方が「ボーイズラブ(BL)」に近いものはあるかも。 つまり、現在の「ボーイズラブ(BL)」は「JUNE」と「やおい」が融合されたもの?
ボーイズラブ(BL)
言わずと知れた、男同士の恋愛の代名詞ですね。 「ボーイズラブ(BL)」という言葉が登場したのは、 1991年12月に白夜書房(コアマガジンの親会社)発行のオリジナルアンソロジー 「イマージュ」のキャッチコピーに「BOY’S LOVE COMIC」と冠したことからでした。 ただこれも言葉が作られた当時は現在のライトなイメージではなく、 元々は「耽美」・「JUNE」の言い換え語だったようです。 現在では手に取りやすいライトさがある男同士の恋愛物を示す言葉になりましたが、 BL雑誌から耽美的な、またはJUNE風味の作品が連載されることもあるので、 「ボーイズラブ(BL)」という大きな括りの中の耽美系、JUNE系、と言う感じになっていて、 「ボーイズラブ(BL)」は男同士の恋愛物(女性向け)の総称となっている気がする。
なんとなく、「きのう何食べた」(よしながふみ)や 「ニューヨーク・ニューヨーク」(羅川真里茂)等は一般向け作品扱いの感覚です。 発行元も関係してるような気もするけど。
まとめ
私の感覚で言えば、「耽美」は同性愛作品の元祖。 卓越した美しさゆえの儚さと怖さが感じられる。現在ではサブカルチャー扱い。 「JUNE」は物語性と男同士の関係性が重視され、 同性であるがゆえの「禁忌」「禁断」「背徳」が強い作品。 「やおい」は同人界隈で使われていたが、 徐々に「男同士の恋愛」として広い意味ででも使われるように。 「ボーイズラブ(BL)」は親しみやすい、手に取りやすいライトさがある。 また、男同士の恋愛物(女性向け)の総称。
本来の意味は違っても、男同士のアレソレ(女性向け)に対して、 「耽美」→「JUNE」・「やおい」→「ボーイズラブ(BL)」 という風に移り変わってきたということです。 かなり主観的に話をしましたが、間違ってたらすみません。
この記事の内容を踏まえて、 「耽美」・「JUNE」を中心に、名作の数々をご紹介していきたいと思います。 お付き合いいただけたら幸いです!