『Dear,MY GOD』2人の行く末を祈りながら読む、魂の救済BL。

あらすじ

 ジャンキー × 神父 

「アンタを俺の “ つがい ” にするよ」

カルト宗教に心酔している若者・リブを救おうと
教団に乗り込んだ神父のロースだったが逆に捕われ、監禁されてしまう。
「つがいになれば、2人とも救われる」
そう盲信したリブは、ロースにドラッグを飲ませ朦朧とする彼をむりやり犯すのであった。
教えを一途に信じるリブが不憫になり、ロースは甘んじてその関係を受け入れるが…。

Dear,MY GOD

Dear,MY GOD

Dear,MY GOD

[著]朝田ねむい

レビュー

ずっと気になっていた作品です。
表紙のイラストとデザインに惹かれたのと、なんと言ってもあらすじのインパクトがすごい。

宗教!ドラッグ!魂の救済!

アングラ要素てんこ盛り。期待が高まります。

ただひとつ、ショックだったのが私が期待していた受け攻めと逆だったということ……。
表紙と煽りで勘違いしていました。
神父×ジャンキーの襲い受け!?だと思っていたのですが表紙の金髪が攻めで黒髪が受けです。

好みの部分では残念でしたが、やはり内容が気になるので購入いたしました。
言うほど拘りはない方なので、神父が受けでも関係性的に十分萌えられたのですが、
きっと受け攻めが逆だったのなら個人的に神本だったに違いない。

ストーリー ★★★★☆
作画 ★★★★☆
ピュア度 ★★★☆☆
エロ度 ★☆☆☆☆
満足度 ★★★★☆
後味度 ★★★★☆



キャラクター

ロース(受け)

神父。物腰が柔らかくて慈悲深い。
過去ドラッグ中毒者だったっことからリブに自分を重ね、救いたいと教団に乗り込む。

リブ(攻め)

カルト宗教に妄信しているドラッグ中毒者。
教祖に言われるがまま盗みを働いている。
すがる神がいないと生きていけないタイプ。根は明るいが不安定。

他の登場人物がタンだったりミンチだったり……お肉。

カルト宗教

善義(神に金を献上する)を詰み「つがい」がいれば「幸福の地」(所謂「死」)へ行ける。
ドラッグは「幸福の実」と呼ばれている。

ストーリー

買い物に来ていたロース司祭はそこで強盗現場に出くわす。
店主に撃退され逃亡した犯人の少年を追いかけ問いただすと、カルト宗教の神の教えに従ったと言う。
その教祖に心酔し判断能力を失っている不安定なリブを放っておけず、教団に乗り込みリブと一緒にいられるように教祖に交渉し、軟禁生活を送ることになる。

リブは子どものようで、ロースに当たるわ、縋るわ、甘えるわ……。
すぐ人を信じてしまう(妄信的)ところや思い込みの激しいところがあり、とても不安定。
そういったことを話している時のリブの目は虚ろでかなりイってます。
熱い信仰心を持っているので、ロースが教えに背こうとしたり、信仰を語る時のガラリと変わる雰囲気に狂気を感じました。

心の葛藤や精神的な表現はあまりないので、感情移入は薄く、ちょっと物足りなさはあり第三者視点でドラマを見ている感覚。

エッチシーンについては無理やりが多いのでどちらかと言えば攻めのリブに萌えました。
ロースに縋りながら気持ちよさそうに涎を垂らしながら腰を振ってるのが可愛かった……!

満足度

2作品が収録されているのですが、どちらとも映画のようなドラマチックさがあります。
同時収録の「はなばなし」は多少ファンタジーでしたが、最後まで展開が読めずに面白かったです。

おすすめ作品

ジャンキー受けが読みたかった同志におすすめしたいのが西田東さんの「願い叶えたまえ」。ジャンキーがテーマというわけではなく、物語の中で受け(893)が薬に染まっていきます。身も心もボロボロになっていく受けを癒してあげたい攻めのお話。男に抱かれるなんて屈辱でしかないのに、身体が欲しがってしまうという葛藤や、愛を知らない受けが攻めに心を開いていく過程が素晴らしいです。一度は読んで頂きたい名作なので、また今度ご紹介したいと思います。

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL漫画感想へ
にほんブログ村

ポチっと押して頂ければ嬉しいです。

『コオリオニ』――ヤバい男たちが組んだ

あらすじ

 刑事 + 893幹部 

1990年代、北海道――…
全国を震撼させる警察の不祥事が幕を開ける。

1990年代、警察庁は相次ぐ拳銃事件の対策として全国的な銃器摘発キャンペーンを始める。
全国の警察は厳しいノルマを設けられ、
それをこなす為に警察がヤクザと手を組むという点数稼ぎのデキレースが横行した。
そんな中にエースと呼ばれる男・鬼戸圭輔はいた。
彼は何人もの犯罪者を情報提供者として飼い、北海道警察の中で一際多くの拳銃を”摘発”していった。
そして彼は自分の運命である誠凛会の幹部・八敷翔に出逢ってしまう。
より大きい山を当てるために鬼戸は柏組の武器庫に目を付け、八敷を潜入捜査に誘う。
八敷は薬の密輸入を目溢しすることを条件に鬼戸と組む。
二人は甘美な成功を期待して潜入捜査に乗り込むが――。
男達が自らの欲望の果てに見た景色とはなんだったのか。
息を吐かせぬ展開で描く渾身のサスペンスBL。

レビュー

読書中ずっと「まともな奴がいない…」と思いながら読んでおりました。
読了後どうしたらこんな話を思いつくのか作者さんの頭の中を覗いてみたい気持ちになりました。
複数もの事柄、過去、人物が絡まり合って二人の主人公の結末に繋がります。
さながら映画を観終わったかのような疲労感を味わいました。

本を手に取り十数ページ軽く読んでみて、軽く読むだけでは話が理解できずに始めから読み返しました。
半分くらいまで読んで、展開の速さから
もしかして下巻から読んでしまったのではないか」(時々やらかす)
と表紙を確認しました。上巻でした。
上巻はひたすら読者を物語に引っ張ってきます。
二人が出会い、エス(警察と情報提供者)として組むことで事態はどんどん後戻り出来ない方向へ向かいます。
鬼戸も警察だからと言って綺麗ごとなどありません。汚い世界です。
上巻では鬼戸のことは表面上のことしかわかりませんが、下巻で鬼戸のことを詳しく知ることができ、物語に入り込むことが出来ました。その過去というのも洒落にならない過去です。
ブルータス!お前もかい!」という気分です。
一見優し気な熊さんのような印象ですが、その笑顔の理由を知り衝撃を受けました。
(下記ネタバレ参照)

出会わなければよかったというわけではなく、
出会ったことで少しだけお互いの人生がマシになったという感じ。
出会ったことで人から外れた感じはありますが。
それが幸か不幸かを考えるのが面白いところ。

所々のコミカルな描写で人間味が伝わり、病み部分とのギャップが際立ったと思います。。
始めにも書いた通り、主要人物にまともな人が一人もいないのでそういった男たちの依存関係に萌えました。
しかし自分のせいではなく幼少期から不幸であったことに胸が痛い。

ストーリー ★★★★★
エロ度 ★★★★☆
視覚的・心理的グロ度 ★★★★☆
疲労感 ★★★★★
忘れられない作品度 ★★★★★



キャラクター

鬼戸圭輔[攻め]

北海道県警の刑事。
大柄+髭という強面だが優しい印象。
正義感のあるタイプかと思いきや目的のために手段を選ばないところがある。
過去結婚していたが、出産間近に妻が玄関で転び流産している。

八敷翔[受け]

誠凛会の幹部。母親がロシア人。
笑って他人の臓器を売り飛ばすタイプ。罪悪などの類が欠如している。肉が苦手。

世界観

作者さんの世界観の作り方には感服いたします。
まず物語の舞台が北海道だということ。
893モノのほとんどの舞台は大体が東京ですよね。
そこで北海道を選んだというのが、公にされていない影の部分を知ってしまった気分になることや、地域特有の習慣や風習、過去の出来事を取り入れることでより、リアリティが増していると思います。
あと北海道県警は過去に不祥事もあったそうで。調べてみたら元ネタでした。(「稲葉事件」参照)
そして、時代が1990年代ということ。
過去には蔓延っていたえぐい犯罪等を思い出してみれば、こんなこともあり得るかもしれないと思ってしまいました。
飲酒運転も咎められなかった時代ですからね。
恐るべき世紀末。
最後に、警察と893の関係性、特に893関連の情報量の多さ。
おくづけのページの資料の量を見て納得いたしました。
作者さんの巧妙な世界観作りのおかげで非現実が現実のようになっています。
私は初めてこの方の作品を読みましたが、元々こういった世界観が好きなのか、よほど勉強や取材をされたのか。
本当にすごい。
しかし現在は引退されているようですね。残念……。

結末と描き下ろしについて

作画

作画はクセがあり読む人を選ぶかと思いますが世界観に合っています。ただひとつ惜しいと思ったことは、話が進むにつれ八敷が女々しくなっていったこと。上巻はちゃんと男の人というイメージなんですが、なぜか下巻になったら所々女々しさが見受けられます。描き下ろしではもう女子です。セックスの時(理由ありき)以外は女々しい仕草は取り除いて欲しかった……。

まとめ

ハードな世界観が好きな方にはピッタリのお話です。本当にえげつないほど893な世界なので、暴力、輪姦、キメセク、フィスト、殺人、指を詰めたりは基本です。グロ耐久の無い方にはおすすめできません。読み込むと軽く3日は引きずりそうな濃厚さがあります。ただ、グロなのに平然とやってのけてるところはライトかもしれない。心の葛藤や、ボコボコになった顔の描写は細かいのに、痛みに対しての描写は少ないと思いました。

おすすめ作品

物語が進むうえで、明るい未来が待っていないのは間違いないのに、二人の最後を見届けたい。どこかに救いを見出したい。という感覚から思い出したのが中村明日美子さんの「ダブルミンツ」。こっちもお互い頭のネジがおかしいタイプですね。「コオリオニ」ほど濃厚な世界観ではないですが、シンプルに病んでます。

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL漫画感想へ
にほんブログ村

ポチっと押して頂ければ嬉しいです。