『コオリオニ』――ヤバい男たちが組んだ

あらすじ

 刑事 + 893幹部 

1990年代、北海道――…
全国を震撼させる警察の不祥事が幕を開ける。

1990年代、警察庁は相次ぐ拳銃事件の対策として全国的な銃器摘発キャンペーンを始める。
全国の警察は厳しいノルマを設けられ、
それをこなす為に警察がヤクザと手を組むという点数稼ぎのデキレースが横行した。
そんな中にエースと呼ばれる男・鬼戸圭輔はいた。
彼は何人もの犯罪者を情報提供者として飼い、北海道警察の中で一際多くの拳銃を”摘発”していった。
そして彼は自分の運命である誠凛会の幹部・八敷翔に出逢ってしまう。
より大きい山を当てるために鬼戸は柏組の武器庫に目を付け、八敷を潜入捜査に誘う。
八敷は薬の密輸入を目溢しすることを条件に鬼戸と組む。
二人は甘美な成功を期待して潜入捜査に乗り込むが――。
男達が自らの欲望の果てに見た景色とはなんだったのか。
息を吐かせぬ展開で描く渾身のサスペンスBL。

レビュー

読書中ずっと「まともな奴がいない…」と思いながら読んでおりました。
読了後どうしたらこんな話を思いつくのか作者さんの頭の中を覗いてみたい気持ちになりました。
複数もの事柄、過去、人物が絡まり合って二人の主人公の結末に繋がります。
さながら映画を観終わったかのような疲労感を味わいました。

本を手に取り十数ページ軽く読んでみて、軽く読むだけでは話が理解できずに始めから読み返しました。
半分くらいまで読んで、展開の速さから
もしかして下巻から読んでしまったのではないか」(時々やらかす)
と表紙を確認しました。上巻でした。
上巻はひたすら読者を物語に引っ張ってきます。
二人が出会い、エス(警察と情報提供者)として組むことで事態はどんどん後戻り出来ない方向へ向かいます。
鬼戸も警察だからと言って綺麗ごとなどありません。汚い世界です。
上巻では鬼戸のことは表面上のことしかわかりませんが、下巻で鬼戸のことを詳しく知ることができ、物語に入り込むことが出来ました。その過去というのも洒落にならない過去です。
ブルータス!お前もかい!」という気分です。
一見優し気な熊さんのような印象ですが、その笑顔の理由を知り衝撃を受けました。
(下記ネタバレ参照)

出会わなければよかったというわけではなく、
出会ったことで少しだけお互いの人生がマシになったという感じ。
出会ったことで人から外れた感じはありますが。
それが幸か不幸かを考えるのが面白いところ。

所々のコミカルな描写で人間味が伝わり、病み部分とのギャップが際立ったと思います。。
始めにも書いた通り、主要人物にまともな人が一人もいないのでそういった男たちの依存関係に萌えました。
しかし自分のせいではなく幼少期から不幸であったことに胸が痛い。

ストーリー ★★★★★
エロ度 ★★★★☆
視覚的・心理的グロ度 ★★★★☆
疲労感 ★★★★★
忘れられない作品度 ★★★★★



キャラクター

鬼戸圭輔[攻め]

北海道県警の刑事。
大柄+髭という強面だが優しい印象。
正義感のあるタイプかと思いきや目的のために手段を選ばないところがある。
過去結婚していたが、出産間近に妻が玄関で転び流産している。

八敷翔[受け]

誠凛会の幹部。母親がロシア人。
笑って他人の臓器を売り飛ばすタイプ。罪悪などの類が欠如している。肉が苦手。

世界観

作者さんの世界観の作り方には感服いたします。
まず物語の舞台が北海道だということ。
893モノのほとんどの舞台は大体が東京ですよね。
そこで北海道を選んだというのが、公にされていない影の部分を知ってしまった気分になることや、地域特有の習慣や風習、過去の出来事を取り入れることでより、リアリティが増していると思います。
あと北海道県警は過去に不祥事もあったそうで。調べてみたら元ネタでした。(「稲葉事件」参照)
そして、時代が1990年代ということ。
過去には蔓延っていたえぐい犯罪等を思い出してみれば、こんなこともあり得るかもしれないと思ってしまいました。
飲酒運転も咎められなかった時代ですからね。
恐るべき世紀末。
最後に、警察と893の関係性、特に893関連の情報量の多さ。
おくづけのページの資料の量を見て納得いたしました。
作者さんの巧妙な世界観作りのおかげで非現実が現実のようになっています。
私は初めてこの方の作品を読みましたが、元々こういった世界観が好きなのか、よほど勉強や取材をされたのか。
本当にすごい。
しかし現在は引退されているようですね。残念……。

結末と描き下ろしについて

作画

作画はクセがあり読む人を選ぶかと思いますが世界観に合っています。ただひとつ惜しいと思ったことは、話が進むにつれ八敷が女々しくなっていったこと。上巻はちゃんと男の人というイメージなんですが、なぜか下巻になったら所々女々しさが見受けられます。描き下ろしではもう女子です。セックスの時(理由ありき)以外は女々しい仕草は取り除いて欲しかった……。

まとめ

ハードな世界観が好きな方にはピッタリのお話です。本当にえげつないほど893な世界なので、暴力、輪姦、キメセク、フィスト、殺人、指を詰めたりは基本です。グロ耐久の無い方にはおすすめできません。読み込むと軽く3日は引きずりそうな濃厚さがあります。ただ、グロなのに平然とやってのけてるところはライトかもしれない。心の葛藤や、ボコボコになった顔の描写は細かいのに、痛みに対しての描写は少ないと思いました。

おすすめ作品

物語が進むうえで、明るい未来が待っていないのは間違いないのに、二人の最後を見届けたい。どこかに救いを見出したい。という感覚から思い出したのが中村明日美子さんの「ダブルミンツ」。こっちもお互い頭のネジがおかしいタイプですね。「コオリオニ」ほど濃厚な世界観ではないですが、シンプルに病んでます。

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『さんかく窓の外側は夜』事故物件、キレイさっぱり除霊します。

あらすじ

 探偵 + 助手 

「除霊ってこんなにエロいの? き、気持ちよかっ…た…」

書店員の三角は、昔から不気味なモノを視てしまう体質で、
除霊師の冷川にその才能を見い出され、無理やりコンビを組まされてしまう。
冷川はすご腕ではあるが、情緒や生活能力に欠けており、
お茶出しや「空気読み」など三角の出番は多い。
そんな中、ある殺人事件に遭遇し……。
日常に潜む恐ろしくかつ不思議な現象を見つけてはズバリ解決☆
凸凹コンビの霊感エンタメ!

さんかく窓の外側は夜 1

さんかく窓の外側は夜 1

さんかく窓の外側は夜 1

[著]ヤマシタトモコ

レビュー

安心と信頼のヤマシタトモコさんです。
そしてホモとホラー!割と好きな組み合わせ。
BLと言っていいのか分からない作品なんですがBE BOYで連載されているということで
ニアホモ(ぐぐってみたら最近はブロマンスというらしい…ジェネレーションギャップ)
の分類でいいでしょうとなりました。勝手に。

ストーリー ★★★☆☆
エロ度(聴覚的) ★☆☆☆☆
満足度 ★★★☆☆
ホラー度 ★★★☆☆
総合評価 ★★★☆☆


駿河屋スタッフ募集中

キャラクター

三角康介

書店員兼除霊アシスタント。
近眼なので眼鏡をかけているが、不思議なことに、霊だけは眼鏡をはずしてもハッキリと見えてしまう。

冷川理人

腕の除霊師だが、その過去や行動など謎だらけ。
人や物などに執着なさそうに見えて、なぜか三角にだけ極端に依存している。

ストーリー

書店員の三角くんは根っからの霊感体質。
ある日除霊師の冷川さんに才能を見出され無理やりコンビを組まされます。

冷川さんの除霊方法は三角くんの身体を使うようです。ほほう。
近づいてきた霊に向かって三角くんの身体に手を通して、ドンッと勢いよく掴むと消えてくれます。
三角くんはそれがまた気持ちいいんですって…!
これはもう除霊という名のセックスですよ。
バッチリ喘いでます。

ストーリーについては少々薄味かと思ってしまいました。
その人がどういった後悔があって霊としてそこにいるのかという経緯が知りたいなぁと。
冷川さんは「そんなことどうでもいいです」って言ってますが(笑
霊なのでタネがないのは当然ですが説明があまりないまま話が終わってしまった感じ……奇々怪々。

ホラー

ホラーの面では純粋に霊が怖い。妙に距離が近い。
気付いてほしいということなのでしょうか……?
一番怖かったのは目玉が裏返ってるオッサンがドスドス近づいてくるところですかね。
オッサン怖い。
夜も眠れないほどという怖さではないのですが、
自分にも起こりうるかもしれないという、ゾッとする怖さがあります。

展開

3話あたりからひとりの女性「非浦英莉可」の謎を追いかけつつ話が進んでいきます。
2巻と3巻も評価が高いみたいなのでとりあえず読んでみようかな。
様子見で評価は☆3つということで。

おすすめ作品

ちなみに、非日常と隣り合わせという似たテイストでおすすめなのが今市子さんの「百鬼夜行抄」。
この作品はBLではないので【番外編】としてまた後日お話しいたしましょう。

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