あらすじ
オムニバス
ふたりとも、傷つけて ひとりで、手に入れた
オレたち3人はいつも一緒にいた。
卒業式の日、オレがアイツの想いを拒否するまでは。
だけどアイツらはオレの知らないところで――。
幼馴染同士のヒリつく三角関係を描いた「後悔の海」「スイメンカ」をはじめ、
光る金属に目を奪われてはじまる「ピアスホール」、
ニューエイジな感覚で描かれる「リスタート」、
女子視点からのBLを描いた「わたしたちはバイプレーヤー」など
“ネガ”な作品を一冊に集約した、はらだ節がはじける短編集。
もしもあのときこうしていれば――?
切なさと、後悔と――。
「ネガ」の中で、あなたなりの幸せをみつけてみてください。
BL界を切り開くパイオニアはらだが描く明暗、
二冊同時刊行ネガティブもポジティブも、贅沢にどうぞ。
レビュー
はらださんの2冊刊行!2冊目『ネガ』です。
はらださんの作品の魅力は前回の『ポジ』参照。
『ポジ』と違って『ネガ』は後味悪め。
メリバとまではいきませんが、幸せと取るか不幸と取るかはあなた次第。
そんな作品ばかりです。
病み系かと思いきや救いようのないバッドはないので安心してください。
エロ度は前回同様高め。
しかし『ポジ』よりも『ネガ』の方が純愛だと思います。
作品としては締められていますが、二人がこれからどうなっていくのか、
最終的な結末を読者に委ねているのは面白いところ。
さまざまな愛のカタチを味わいたい方は『ネガ』をどうぞ!
ストーリー | ★★★★☆ |
エロ度 | ★★★★★ |
感情表現 | ★★★★☆ |
後味の悪さ | ★★★★☆ |
クセになる度 | ★★★★★ |
『後悔の海』『スイメンカ』
幼馴染の三角関係
『後悔の海』
中学校卒業式前日に男友達から「ホモとかキモイよな」と聞かれ、
卒業式後に別の男友達から告白された。
「ホモとかキモイ」と酷い言葉で振り、そのまま二人と疎遠になり数年後。
「ホモとかキモイよな」と聞いてきた友達と、
自分に告白してきた男友達がキスしているところを目撃する。
思春期だぁ……。
中学生というのは一番多感で人の目を気にしてしまうお年頃。
自分に告白してきた人が自分以外の誰かと付き合ってると知り、
突然独占欲が湧き上がって好きだと自覚する、
そんなエゴイスティックな感情は人間臭くて好きです。
告白された方もした方も、男同士という後ろめたさを感じるのはBLの醍醐味。
ノンケが男からの告白をすんなり受け入れられないのも仕方ないと思ってしまいます。
むしろ切なくていい。
そして人のものになってはじめて形振り構ってられなくなる! 萌え!
しかし後悔先に立たず……。
『スイメンカ』
『後悔の海』の「ホモとかキモイよな」と言った側のお話。
名前表記がないので分かりやすくAとします。
卒業式にCに告白したB、Bに告白されたC。3人は仲良し。
Bのことがずっと好きだったAは、ある日Bに「Cのことが好きだ、卒業式に告白する」と告げられる。
なんでや!!!なんでやァ!!!
女やったら、まだ、我慢したんに、
なんでよりによって、あいつねん!!!
なんで、俺じゃなくて、あいつねん!!!
俺の方が先に、好きになったんに!!!
二人が付き合うなんて、耐えられない。
そう思ったAはCに「ホモとかキモイよな」という言葉を投げてBを振るように仕向ける。
振られたBを慰め、自分じゃだめかと泣いて訴え、二人は付き合うことに。
二人の初えっちが初々しくてエロ……。
AがBを好きで好きで必死な様子とBの初心さが可愛くてキュンとします。
やっと手に入れられたと、AはBを抱きしめながらも後ろめたさを感じて「ごめん」と囁くのでした。
そして二人は大学生になって『後悔の海』に繋がります。
「あん時はごめん。俺も好きや。」
CがBに告白しているところを目撃してしまうA。
なんでやろ、実らせたはずなんに
もう怯えんくていいはずなんに
ふたりとも傷つけて
ひとりで手に入れた
なんでやろ
どっか
どっか
「むなしいなあ…」
うわあああ……。
みんなが主人公のようなので、誰かが幸せになり誰かが不幸になる道が辛い。
はじめにずるいことをしたAですが、Bのことを本当に好きな気持ちが伝わるので自業自得と言って責めることができない。
しかしAがCをけしかけなければBとCは付き合っていたかもしれない。
BはCにまだ未練がありそうなのが切ない……。
『ピアスホール』
マッサージ師 × サラリーマン
施術をしていた患者のサラリーマンに不似合いなボディピアスを見つける。
「他の穴も、見たいですか?」
誘われるがままに全身の5つのピアスを見せてもらい、
純粋に美しいと感じた彼・臼井さんと身体の関係を持ち、恋人同士になった二人。
穏やかで幸せな日々を過ごし、このまま順調に関係が進むと思いきや、
5つの穴はそれぞれ昔の恋人に空けられたものだと聞いたことで、
彼の身体の穴を綺麗だと思えなくなり……。
ピアスってエロいですよね。
しかも普段は洋服で見えないところに空けているというのがまたそそります。(同じくタトゥーも)
痛みとともに、自分の身体を飾りをつけるというは倒錯的な行為のように感じます。
お尻に咥えながら攻めの舌に穴を空ける行為が一番興奮しました。
確かに人に穴を空けられたら、その穴がある限りその人のことを忘れられなくなるかも。
だから上書きするために拡張するというのはものすごい独占欲ですね。
臼井さんが淫靡で、始めは攻めを翻弄してるのですが、
最終的に臼井さんの方が攻めから離れられなくなっています。
しかし臼井さん自身が、攻めが自分に執着するように仕向けたようにも見えます。
どっちにしろ、とても幸せそう。
『リスタート』
ダウナー × アッパー
『私たちはバイプレイヤー』
地味系いかつめ高校生 × 王子様系高校生
一時期話題になった『女子BL』に掲載されていた作品。ギャグです。
『女子BL』とは、
男同士がイチャイチャしている現場が見たい!
むしろ壁になりたいベッドになりたい空気になりたい!
二人が幸せになるために助太刀したい!
愛を深めるための当て馬になりたい!
そんな腐女子の願望を叶えた、女子目線のアンソロジーです。
はらださんのお話は、人格入れ替わりというありがちな設定。
しかしこんな使い古されたネタでもやはり面白い。
才色兼備の姫海さんは、隣の席の皇子山くんに恋している。
そんな中、クラスでも地味な男子脇川くんと人格が入れ替わってしまった!
脇川くん(身体は姫海さん)と一緒にいるところを皇子山くんに見られ、
誤解されたとショックを受けるが、
姫海さん(身体は脇川くん)は皇子山くんに睨まれたり、嫉妬むき出しの言葉を投げられる。
(どっちに嫉妬しているかはお察しの通りですが、ここで皇子山くんが姫海さん(身体は脇川くん)にキス顔を向けてくる(姫海さんは何がしたいのか分かっていない)のがとても可愛かった!笑)
「もしかして皇子山くん、私のこと好きなのかしら」
テンション上がっちゃう姫海さん。
ひょんなことから元の身体に戻るのですが、
その拍子に脇川君の素顔(普段は前髪で顔が見えない)を見てしまい、
ワイルドな容姿にときめいてしまう姫海さん。
そしてある日脇川くんと皇子山くんが離れた空き教室で言い争っているところを目撃。
「もしや私を取り合って喧嘩!?」
急いでその場に向かって止めに入ろうとドアを開けると……♡
好きになった二人が付き合ってました。
ホモに振られちゃう女の子を見て毎度思うことなのですが、
他にいい男見つけて幸せになって!!
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